台風一過、是枝裕和監督、約束通りに上海に来る:満席、チケットの払い戻しなし
Sep 20, 2024
9月16日の夜、映画展最後の上映作品『誰も知らない』の上映後、是枝裕和監督が天山シネマ・虹橋芸術センター旗艦店にファンとの交流のために訪れました。
当日は台風「バビンカ」が上海に上陸すると予測されたため、是枝監督の前日のフライトはキャンセルされ、羽田空港近くのホテルで一夜を過ごすことになりました。昼過ぎに台風が上海を離れると、彼はようやくファンや友人たちに会えることを喜び、すぐに出発したのでした。観客も同様に彼に会えることを強く期待しており、当日は満席でチケットの払い戻しをする人はありませんでした。
今年は『誰も知らない』の公開から20周年です。この映画は1995年第40回シカゴ国際映画祭でゴールデンヒューゴ賞を受賞し、第57回カンヌ国際映画祭でパルムドールにノミネートされ、主演の柳楽優弥がカンヌ映画祭で最年少主演男優賞を受賞しました。この作品は、母親に捨てられた4人の子供たちが、自分たちだけで生き抜いていく姿を描いています。是枝裕和監督は実際の事件に着想を得て、1988年に脚本を書き始めました。彼が脚本を書き、この映画が公開された当時、日本には「育児放棄」という言葉はありませんでしたが、現在では育児放棄の問題は日本社会でますます注目されるようになっており、彼は自分のこの作品は意味があるものだと感じています。
家族や親族関係は、是枝監督の作品によく取り上げられるテーマであり、彼はしばしば子役たちに長時間カメラを向け、子供の感情の変化を捉えます。観客から、子供たちとのコミュニケーションのコツを尋ねられると、是枝監督は少し考えてから「特にコツはないんですが、いくつかルールはあります。最も大切なルールは、焦らずに、辛抱強く待つことです。どの子にもそれぞれの個性、話し方があります。私たちが書いたセリフを教えるのではなく、彼ら自身が言葉を見つけ、それを彼ら自身の言葉を使って演じてもらうこと。これが私なりの方法です」と笑顔で答えました。
是枝監督は常に俳優たちを「先生」と考えており、俳優たちとの交流を通じて、現場のセットやセリフを修正することで、新たな「出会い」が生まれると信じています。特に2018年に他界したベテラン俳優の樹木希林には感謝しており、『万引き家族』『歩いても 歩いても』『海よりもまだ深く』など6作品で共に映画を作りました。彼は「彼女は非常に厳しい先生であり、私の現場や作品を評価する資格がある方だと感じました。彼女の演技を通して、自分の書いたものがより理解できるようになり、それらが良い作品になりました」と述べました。
なぜいつも家族をテーマにした映画を撮るのかと尋ねられると、是枝監督は頭を掻きながら「わからないです」と率直に答えました。その後、是枝監督はしばらく頭を下げて考え込んでから「これは僕自身が経験したライフステージと関係があります。例えば、父の死、母の死、その後自分に子供が生まれて父親になりました。私はごく自然に自分の関心のあるテーマを選んだだけです。もしまた同じような時期に入ったら、また同じテーマを撮るかもしれません」と語りました。しかし、そのテーマが多く取り沙汰されるようになると、彼はかえってそのテーマから離れ、別のテーマに挑戦したいと考えるのです。彼は「自分自身のことがあまり好きではないのかもしれません」と話します。
是枝監督は常に自分を「映像の作家」と考えており、人は決して「孤独」ではなく、常に社会や集団との関係の中にいると信じています。「私たちは常に何らかの共同体に入っていきます。異なる部分は、私たちがその共同体に溶け込めるかどうか、その共同体の中で自分の価値を実現できるかどうかです。私はこのような関係を映画で表現しているだけです」。これは、彼が好んで食事のシーンをカメラに収める理由でもあります。彼は、食卓で人々の関係が強化されると考えています。誰が料理をするか、誰が片付けをするか、手を動かす方向、顔を向ける方向などが、日常生活のシーンをよりリアルにすることができるのです。
「普通の人の生活の中に奇跡はありますか」と、雨の中、会場に駆け付けた観客のひとりが質問しました。彼は是枝監督の作品に励まされ、映画制作を学ぶ決意を固めたといいます。
しばらくの沈黙の後、是枝監督は「日常生活の中の見えない人々にカメラを向けろ」という映画『奇跡』の脚本家、山田の言葉を思い出しました。映画『奇跡』は、日常の中の奇跡を探すために旅に出た子供たちの物語であり、彼は、それが単なるきれいごとではなく、誰もが探求し、経験する必要があるプロセスだと信じています。「それが奇跡かどうかはわかりませんが、ずっと、ごく日常的なことを表現したかったのです」と語りました。
映画上映後の交流会の後、是枝監督は会場のファン全員と写真を撮り、サイン入りポスターを皆にプレゼントしました。そして、彼は穏やかな笑みを浮かべ、台風の日なので帰る際に安全に気を付けてくださいと皆に言っていました。
情報源:上観新聞 (Shanghai Observer)
「台風一過、是枝裕和監督、約束通りに上海に来る:満席、チケットの払い戻しなし」(上海国際サービス)